善通寺からみえる世界遺産

   善通寺からみえる風景・・・ 実は世界遺産?!

街道が交差するローマの都市(2017年第2号)

ティムガッド
ティムガッド
かっての路面電車
かっての路面電車

アルジェリアのティムガッドは、古代ローマのトラヤヌス帝が建設した軍事要塞用の植民都市でした。サハラ砂漠の侵食によって19 世紀まで砂中に埋もれていたため保存状態がよく、1982 年に世界遺 産に登録されました。 ティムガッドは複数の街道の交差点に位置します。街道には、戦勝記念の凱旋門(ティムガッドではトラヤヌス門)が置かれました。善通寺市にはローマの城塞都市のような構造物はありませんが、多度津港や丸亀港への往来に便利な鉄道が交差する街になりました。当地の第 11 師団は日露戦争で乃木将軍率いる第3軍に編入されたため、その戦勝記念に善通寺の南大門が再建されました。善通寺市の風景には、軍都の遺物がとけ込んでいます

凝灰岩地下のキリスト教世界(2017年第1号)

カッパドキア
カッパドキア
牛穴
牛穴

カッパドキアは、トルコ南東部のアナトリア高原にある凝灰岩が広がる台地のことを言います。なかでも、長年の浸食によって「妖精の煙突」と呼ばれるキノコ状の奇岩が林立するギョレメ渓谷では、4 世紀頃からキリスト教徒が居住し、巨岩をくりぬいて岩窟教会や修道院を造りました。様々な装飾や色鮮やかな壁画で飾られた教会は キリスト教文化の一端を示していることから、1965 年世界遺産に登録されました。この世界遺産は、地下都市のみでなく、カッパドキアの奇岩による妖艶な風景美も含めた複合遺産になります。 善通寺市の山並みに分布する凝灰岩層に は巨大な地下都市はありませんが、仏像や 経典を安置する岩屋や磨崖仏が彫られ、また仏塔の材料として採石されました。

世界遺産になった示現の地(2016年第3号)

モン・サン・ミシェル
モン・サン・ミシェル
捨身が岳 禅定
捨身が岳 禅定

 8世紀の初頭、当地の司教オベールに聖 堂建立を促す大天使ミカエルのお告げがあり、この島に礼拝堂が建てられました。これが聖ミカエルの山を意味するモン・サン・ ミシェルです。 モン・サン・ミシェ ルは、英仏の百年戦争で英軍の包囲を退 け、さらに聖ミカエルの啓示を受けたジャ ンヌ・ダルクによって仏軍が勝利しました。善通寺市の捨身が岳には、修行中の空海の前に釈迦が現れた伝説が残ります。平安歌人の西行や真言僧たちは、空海生誕の地の善通寺を訪れると、必ずこの山に登っています。釈迦如来の示現の地には特別な想いがあるようです。

溶岩台地の石窟寺院(2016年第2号)

捨身が岳 禅定
捨身が岳 禅定
アジャンターの石窟寺院群
アジャンターの石窟寺院群

 

インドのデカン高原の北西に複数の巨大な 仏教石窟寺院跡があります。この地域には、デカン・トラップという流動性のある溶岩が固まってできた洪水玄武岩の台地が広がります。アジャンタ石窟寺院は、この溶岩台地がワゴーラー川によって削り出された断崖に築かれました。善通寺市の山々にも溶岩が固まった崖があります。かつて真言宗松尾寺の鎮守だった金刀比羅宮の奥の院や葵の瀧がある大麻 山の崖のみでなく、幼少の空海が仏門に誓いを立てて身を投げた際に、釈迦が現れたという我拝師山の捨身ヶ岳禅定がありま す。世界的な仏教美術ではありませんが、 日本が誇る仏教遺跡の風景が残ります。

聖地巡礼の旅物語(2016年第1号)

俳句茶屋(弥谷山麓)
俳句茶屋(弥谷山麓)
カンタベリー大聖堂前
カンタベリー大聖堂前

 

江戸時代、藩を超えた交通は各地の関所や口留番所によって監視され、庶民は自由に旅行できませんでした。しかし、伊勢参りなど有名社寺の参詣は認められたため、人々は通行手形を持って社寺参詣の旅にでかけました。十返舎一九の膝栗毛は、そんな人の物語です。旅先で目にする変わった方言や風習を笑いを交えて描くことで、旅の楽しみを江戸の人々に伝えました。旅先の出会いや触れあいの逸話は、カンタベリー物語に通じるところがあります。空海生誕地の善通寺市には、こうした旅の出会いの風景が残ります。

世界遺産になった修験の行場(2015年第3号)

石鎚本教奥行場(筆の山)
石鎚本教奥行場(筆の山)
金峯山寺
金峯山寺

 

修験道の歴史は古く、奈良時代には全国各地に存在したと言われます。修験の祖と言われる役行者は金峯山で蔵王権現を感得したとされ、以後修験の聖地になりました。平安時代、 空海や円珍らが密教をもたらすと、密教が 修験道の中心的な役割を果たすようになり ました。

 江戸時代になると、各地で生まれた様々 な修験道は、幕府により本山派か当山派の いずれかに所属させられ、祈りを通じて 人々の生活に深く関わっていきました。し かし、修験道を呪術的とした明治政府が、 一時廃止したため、修験道は衰退しました。

世界遺産も含まれるレイライン(2015年第2号)

善通寺龍王社
善通寺龍王社
イブベリー・ストーンサークル
イブベリー・ストーンサークル

イギリスの 聖ミカエル・レイラインは最も有名なレイラインの一つです。ギ リスの南部にある多くの聖ミカエル教会は直線上にならび、その線上に古代ブリテン の重要な遺跡や聖地が位置するというもの です。線上には、アーサー王伝説が残るグ ラストンベリーなどがあり、しばしばレイラインと超常現象が関連づけられました。

 聖ミカエル・レイラインには、ストーン・ヘンジとともに世界遺産に登録されたイブベリー・ストーンサークルがあります。ここでは、環状列石を「横たわる龍」に見たてて。古くよりさまざまな超常現象が伝えられています。

世界遺産になった巡礼の道(2015年第1号)

善通寺

サンティアゴ・デ・コンポステラ


  巡礼とは聖地を巡ることをいいます。また、参詣ともいい、特に四国へんろ八十八ヶ所を巡ることを遍路といいます。中世ヨーロッパではサンティアゴ・デ・コンポステラなどの聖地に巡礼すると、贖宥(しょくゆう:信徒が果たすべき罪の償いを軽減することが許される贖宥状が与えられました。徒歩で約1ヶ月ほどかかる聖地巡礼の道程に償いの意味があるといいます。また、病気治癒などの奇跡の噂も巡礼の大きな原動力になりました。

 日本の巡礼路は、本来衆生救済の験徳を求める修験者の修行場として開かれましたが、後に一般僧や民衆が巡るようになりました。庶民の巡礼は聖地の霊験を求めるものだったと思われますが、徒歩での巡礼は願いを叶えるための修行でもありました。 洋の東西を問わず、歩いて巡礼をすることに意味があるようです。

世界遺産になった城壁(2014年第3号)

急峻な崖(上から)
急峻な崖(天霧城跡の上から)
石の城壁・カーナボン城
石の城壁・カーナボン城(イギリス)

 石製城壁によって堅固に守られたヨーロッ パの城の攻略には、城壁を倒す戦法が考案 されました。南英やフランスの柔らかい石 灰岩(白亜)の大地では、城壁の下に坑道 を掘り、仕上げに豚の脂で坑道の支柱を燃 やし、城壁をその重みによって倒壊させました。これはロンドン近郊のロチェスター 城やドーバー城などで行なわれました。 

 かって西讃岐を支配した天霧城は、巨大 な城壁を備えていませんが、山の急峻な崖が城壁の代わりになっています。こうした里山の風景は、かつて強者どもが見 た夢の拠点として大切にしたい風景といえます。

世界遺産になった分水路(2014年第2号)

    善通寺市の四分水路      バリ島の分水堰(インドネシア)

 

バリ島では、限られた水を厳しい掟の中で分配し、火山島という過酷な地で生活してきました。人々は分水を意味するスバック(水利組合)を組織し、ヒンドゥーの神を祀って島の隅々まで水路を張り巡らせました。こうして、山間を極限まで利用する棚田ができあがりました。

 善通寺市の水路は、空海が修築したという満濃池から流れ出る水を、網目状の水路を張り巡らせて分かち合い、池や水田に引水しています。主な部分は江戸時代に完成しましたが、分水の思想は千年以上続いています。残念ながら、分水路の多くは蓋をされていますが、大切な水を分かち合った歴史ある文化的景観なのです。

 

世界遺産になった祭祀の墳丘(2014年第1号)

       宮が尾古墳         カホキア墳丘(米国)

 

カホキア墳丘は、アメリカ・インディアンが8〜15世紀につくりあげたミシシッピ文化の中心地、カホキア(ミシシッピ河畔;イリノイ州)に築かれた方形のマウンドです。

 この墳丘は墓にもされましたが、基本的には祭祀として使われ、神殿を建築するために墳丘の頂部は平坦にされました。この点が、日本の古墳など墓にされた墳丘とは異なります。こうした墳丘の特徴は、中米マヤ文明などの石製のピラミッドなどと共通しています。

 善通寺市の王家の谷につくられた円墳や前方後円墳などの古墳は、仏教伝来までの善通寺市の繁栄を伝えています。ピラミッドのように巨大かつ技術の粋を凝らしたものではありませんが、古の王たちの聖地として大切にしたい風景です。

 

世界遺産になった五つの峰 (2013年第4号)

       五岳山          五台山(中国)

 

古くからの聖地として知られる五台山(中国山西省)、三千メートルの山並みに山岳仏教寺院が林立し、その文化的景観が評価されて、2009年に世界遺産に登録されました。

 五台山は東西南北中の五方の峰からなるため、釈迦の掌(五本の指)に見たてられました。最盛期には三百以上の寺院があったといわれ、空海が師事した恵果の師、不空が建立したという金閣寺もその一つでした。天台座主になった慈覚大師もここを訪れ、法華経と密教の未決問題の解答を得たといいます。

 善通寺の裏手に位置する五岳山は、最も手前の香色山から筆の山、我拝師山、中山、火上山へと連なっています。幼少の空海の捨身誓願伝説が伝わる五岳山は「釈迦の掌」状ではありませんが、古くより山麓山中に山林寺院が建てられた聖地として、大切にしたい風景です。

 

世界遺産になった天空の道場 (2013年第3号)

  冬の禅定寺(我拝師山)        メテオラ(ギリシャ)

 

ギリシャ北西部に、メテオラと呼ばれる奇岩上に建てられたキリスト教の修道院群があります。俗世との関わりを断ち、祈りとを旨とする中世の修道士たちは、断崖絶壁によって隔絶された巨大な岩山の上に修道院を建造しました。9世紀頃から単身のが始めた修行活動は、14世紀ごろに共同生活の修道院へと発展し、次々と修道院が建造されました。

 メテオラの修道院は最大で高さ400mの水鳥にたつ石灰岩柱上の上に建てられています。6000万年前の石灰岩が浸食によって削られた自然の造形物です。この巨大な岩塊群とその周囲の山河には、多数のほ乳類や鳥類などが生息できる生態系がつくられています。

 このように、メテオラは生態系をなす独特な地形美と類い希な修道院文化が高く評価されて、文化遺産のみならず自然遺産として、1988年に世界遺産に登録されました。世界に29件しかない複合遺産の一つにあげられます。

 空海の捨身誓願伝説の残る我拝師山は、メテオラのような巨大なものではありませんが、善通寺市が誇る天空の道場として大切にしたい風景です。

 

世界遺産になった灌漑システム (2013年第2号)

 榎木湧(改修前)           アフラジ(オマーン)

 

西アジアの乾燥地域では、農耕用の地下水路が造られています。イランではカナート、アラビア半島ではファラジ(アフラジ)と呼ばれます。日本のマンボも同じものです。

 アフラジは山麓の扇状地の地下水を掘り当て、蒸発を防ぐために地下の横穴で農耕地に水をひく水路です。水路の先はオアシスになります。河川が全くないオマーンの農業は、このオアシスで営まれてきました。三千以上あるアフラジのうち最大最古のものが、その歴史性と涸れることのない水利システムとしての価値が評価されて、2006年に世界遺産に登録されました。巨大な人工地下水路のアフラジに対して、善通寺市の湧水は小さな天然の地下水路です。しかし、この世界遺産は、善通寺市の歴史ある湧水がとても貴重なオアシスであることを示しています。

 

世界遺産になった照葉樹林 (2013年創刊号)

 大麻山の鎮守の杜            マデイラ島の照葉樹林

 

 照葉樹林が世界遺産になったものがあります。それは、ポルトガルのマデイラ島で広範囲(こんぴらさんの百倍)に生育する月桂樹やタブノキの森です。ヨーロッパでは、照葉樹をはじめ、多くの植物種が氷河期に絶滅しましたが、マデイラ島の照葉樹林は奇跡的に生き残りました。しかし、その面積は15世紀以来の開発によって著しく減ったため、1999年、氷河期以前のヨーロッパの植物の進化や生態系を示す例証として自然遺産に登録されました。これによく似た大麻山の照葉樹の森が、世界遺産になる日がくるのでしょうか。

 西日本の照葉樹林は百年以上かけて完成する自然林といわれ、しばしば鎮守の杜にその面影がみられます。大麻山の照葉樹林は、金刀比羅宮や大麻神社の鎮守として長年大切にされてきた、全国でも有数の森です。大切にしたい風景です。

 

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